
SLOCsに寄せて
SLOC(スロック)という謎の言葉は2011年に東北芸術大学で開催した第5回サステナブルデザイン国際会議でのメインスピーカーとしてお招きしたミラノ工科大学教のエツィオ・マンズィーニ教授が、会議の後で樹氷見学のために移動中の車内で、そっと私の耳元でささやいた謎の言葉(と彼は言い添えたのですが)。
当時、ヨーロッパで隠語のように広まっていたらしい。
Sはsmall、Lはlocal、Oはopen、Cはconnectedだという。それは自然環境に寄り添って生きるサステナビリティのためのキーワードだという。
実は、教授は講演の中でSmall とLocalの話をしていた。都市にしろ、施設にしろ、システムにしろ、巨大化し一極集中してゆくのは効率的かもしれないが、何かあったときに取り返しのつかないことになりかねない。その事例として挙げたのが原子力発電所だった。 マンズィーニ教授が帰国して2週間後に起きたのが東日本大震災と福島の原発事故だった。 ミラノから国際電話を掛けてきた教授はほとんど鳴き声で、自分は予言めいた話をしてしまったとのではないかと謝っていた。でも、それは真理なのだから仕方ない。 SLOCつまり、Small:小さな規模で、Local:分散していても、それぞれがOpen:開かれていて、なおかつ、Connected:つながっている。そういう有機的な構造をデザインすることで、サステナビリティが保たれる。つまり、人間社会が自然と共生するための基本原理なのだという。 ところが、現代の資本主義経済社会では、資源の大規模な採取、資本集約的な大量生産、その商品の大量移送と拡販が大規模な消費に結びつき莫大な利益をもたらし、それがまた資本に繰り込まれるというサイクルが回ることで、人間の文明が発展し、拡大し進化すると考えられているから、SLOCなどという呪文を唱えるとテロリスト呼ばわりされ、魔女狩りにあうと思われているらしい。
私は魔女でもテロリストでもないが、インダストリアルデザインという資本主義経済の潤滑油かビタミン剤のような仕事をし、その本質を研究するなかで、矛盾と限界を感じていたので、東日本大震災を機に本気でSLOCを実践するために、東京を離れ、山口県の山の中に小屋を建て、そこで木や草や虫たちと暮らしながらデザインの本質について考えて行動してみることにした。 その時に、SLOCにもう一つslowを加えてSLOCsを目指そうと決めた。小規模で、地方にあって、開かれていて、社会とつながっていても、せわしなく何かを追い求めたり、早急に結論を得ようとしたりするのではなく、ゆっくりと活動するなかで何かを確かめるために。
さて、その後15年間にわたる山口の小屋での出来事は今後少しづつ報告するとして、2025年の暮れに東京に戻って、皆さんとサステナブルなデザインの在り方について語り合い、情報を共有するためにSLOCsサイトを立ち上げることにしました。